毎度つまらない小噺を一つ

ある若者が言った。
「僕は後世まで残るような名言を遺したいんです！　先生、どうすれば良いんですか？」

先生は言った。
「他人に頼ってばかりの人間の言葉は、他人の受け売りばかりだ」

若者は言った。
「わかりました。それならば誰にも頼りません。
一人だけで素晴らしいものを遺して見せます！」

先生は言った。
「他人と関わる事の無い人間の言葉や行動は、独り善がりばかりだ」

若者は言った。
「ならば先生、私はどうすれば良いんですか！」

先生は言った。
「君のように、後世に残る何かを為したがる人間は、得てして成功しない。
何故だか分かるかね？」

若者は言った。
「わかりません。皆、後世に残るような事を為したがっているのではないのですか？」

先生は言った。
「それをしたがる人間は、その為に何をすれば良いのかから考える。しかし、だ。
本当に大きな成功をする者はある目的を持ち、それを成し得た時、それがたまたま評価され、
後の世に語り継がれたに過ぎん。
『本物』はスタートラインから既に先へ進んでいるのだよ。
それに、目的の為に何をすれば良いのかも知っている人もいる。
それならば、スピードまで段違いだ。

さて、ここらで問おう。君は何を以って後世に名を遺そうと言うのだね？」

若者は、何も言わずに立ち去った。